医療倫理 -1-

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倫理学の講義ノートを資料として公開いたします。予習・復習・試験対策にお使い下さい。

もちろんここに記した事柄以上の事を、教室ではお話するかも知れませんが、最低限の情報はweb上に公開する予定でいます。

講義を受けるにあたっての注意

質問がある場合には、簡単で短くても結構ですから一度文章にしたものを持参してください。その際にはぜひ、自分で書いた文章を読み返して下さい。読み返してみると何が分からないのか、何を聞きたいのかがより明確になると思います。

質問書は講義時に持参下さっても結構ですし、e-mailで送られても結構です。その際、所属、学籍番号、名前など(メールの場合は御返事のためにアドレスの明記)を忘れずにお願いします。メールは文末の©以下をクリックすると送れます。タイトルは適当に変えて下さって結構です。

質問は歓迎いたしますが、何を聞かれているか分からない質問に適切に答えるのは難しいものです。質問をすることそれ自体よりも、質問をするために自分の書いた文章を読み返すことによって、あなたの表現力・文章力が付くとすれば何よりでしょう。

講義の概要

この講義では医療倫理を扱います。教科書として用いる太陽出版刊『 医療倫理 Q & A 』の内容をかみくだきながらお話してゆきたいと思います。学生の利便を考慮して教科書のページ数を明示しながら解説してゆきます。

テキスト

教科書;太陽出版『 医療倫理 Q & A 』同刊行委員会編

参考書;世界思想社『生命倫理の現在』塚崎智・加茂直樹編

初回の講義

倫理とは何か(pp.12-15)

規範の必要性

そもそも倫理学とは何でしょうか。さまざまな集団生活をしているわれわれには好きな事をする自由があるはずです。しかし私の好きな事が誰かの好きな事をさまたげる事によってしか実現できないとしたらどうしたら良いでしょう。その誰かと私とは同じ人間として平等に好きな事をする権利があるでしょう。私が好きな事をするのは私の権利ですが、誰かがその人にとって好きな事をする権利を尊重するのは私にとっての義務となるでしょう。義務をはたしてこそ権利を主張できるとも言えるでしょう。

こうして他人の権利を尊重しつつ、自分の権利を実現するにはどうしたら良いか考えます。そこで定められるのが規範と呼ばれる行動についてのルールです。

倫理の原理

社会のはさまざまな場面=領域があります。それらのそれぞれにおいて規範があると考えられるでしょう。一般的な倫理の他に、企業倫理、職業倫理、医療倫理などです。

規範についてもう少し具体的に考えてみましょう。ルールには古来さまざまなものがありました。それらをタイプによってまとめると、一つは自分が誰か他人からして欲しいと思う事をしなさいという積極的勧奨命令です。もう一つは他人からはして欲しくないのでそれを自分は他人にしてはならないという消極的禁止命令です。

倫理的行為の原則

倫理的行為というのはただ単にそのルールに従えばそれで良いという訳ではない。まわりに合わせていれば良いというのではない。それぞれの場合に自分で考えて自分で判断し行動する。その責任はすべて自分がとる。それが倫理的な行為であると考えられます。

法と倫理はどう違うか(pp.16-19)

法と倫理
講義中の話と付けたし

世の中には二種類のルールがあると考えられます。一つは「法」でありもう一つは良心、道徳、宗教といった「倫理」の領域のものです。「法」は人間を外側から物理的に強制してルールを守らせます。それに対して「倫理」は人間の内面=心にうったえかけてルールを守らせる、こんなふうに言えるかも知れません。どちらが厳しいとか、どちらが力を持っているとかいう単純な比較は出来ません。両者は共に人間のふるまいに関わってきますが、異なる種類のものであるからです。

倫理学は哲学の一分野であるとも言えます。世の中には科学的なモノの考え方の他に、哲学的な(もう少し正確に言えば、哲学の)考え方があります。科学は実益をわれわれにもたらしてくれますし、その説明は客観的で合理的です。しかし科学はその出発点である一番初めの原理についてはそれを無前提に認めて受け入れています。科学が無前提に認めている一番初めの大元の前提は大抵の場合、認めてしまってもわれわれの日常生活には何の問題もないように思えるものです。しかしその無前提のものを問題にし、それは何なのかを問うのが哲学によるモノの見方の特色です。

哲学は非常に理屈っぽいものなのですが、そうした哲学の中でもわれわれの日々のふるまい(行為、とも呼びますが)に関わる分野を倫理学と呼ぶ事もあります。人間が何らかのルールに従うとはどういう意味を持っているのか。そもそもそういったルールはあるのか。あるとすればどんなルールなのか。などなど、こうした事を考えるのが倫理学の領域の仕事と言っても良いかも知れません。

また、科学は事実を扱い倫理学は価値を扱う、と言う事も出来るでしょう。スポーツにも記録をきそう競技だけではなく、見え方の美しさをきそう採点競技があります。スキー・ジャンプでは最も遠くまで飛んだ選手より、飛んでいる時の姿の美しい選手の方が良い成績になる事があります。どこまで飛んだかは事実として科学的、すなわち客観的に測定出来ますが、飛んでいる最中の美しさは採点する審判によって評価が変わる事があります。

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©SAITO Toshiyuki