倫理の話

西洋思想篇 その9

ストア派

ストア派とはアテナイの「彩られた柱廊(stoâ poikilê)」で派の創始者ゼノンが教えた事に由来する名前である。ゼノンは小ソクラテス学派の一つ、キュニコス派のクラテスに師事したと伝えられている。

クラテスの他にゼノンはメガラ派のスティルポンやアカデメイアの学頭クセノクラテスやポレモンらに師事したと伝えられている。

またゼノンを継いだクレアンテスや比較的多くの断片が伝わるクリュシッポスによって我々の古ストア派に関する知識は構成されている。しかし現存するストア派の著作の多くは、ローマ帝政期のものである。キケロ、セネカ、エピクテトス、マルクス・アウレリウス等の名をここでは挙げておく。

キュニコス派

キュニコス派とはソクラテスの影響下に生まれた禁欲主義を掲げるグループである。その祖はソクラテスの同時代人であるアンティステネス(BCE.445ca〜365ca)である。彼はソクラテスの有する禁欲主義的側面のみに注目した。しかし最も良く知られているキュニコス派の学者は、樽の中に住んだという犬のディオゲネスことシノペのディオゲネスである。

キュニコスとは「犬の」という意味であり、彼らは裸足で一枚のボロ布だけを身にまとう乞食の生活を理想と考え実践した。彼らのシンボルは杖やズタ袋であるが、袋一つの中に生活に必要な最小限の全財産を入れ持ち歩いていた。

学問分類

ストア派は学問を、論理学、自然学、倫理学の三つに分ける。論理学は形式論理の他、文法学や知識論を含んでいる。

参照 ストアの自然学を参照

ストア派の倫理学

彼らは世界は物質から成っており、無限に同じ事を繰り返すと考えていた。前の世界でもあなたがいて、今のあなたと同じ事を考え行動していたのだ。未来の事をあなたは知らないが、それは既に以前のサイクルの中で起きてしまった事なのだ。このように未来は決まっているという考えを「決定論」と言う。

人間の魂は「火的気息=プネウマ・ピュロエイデス」という物質であり、この「気息(プネウマ)」は宇宙の隅々まで行き渡っている神のロゴスの一部を成している。したがって人間は宇宙を支配する原理である「ロゴスにしたがって生きる」のでなければならない。

人間の魂は部分に分かれてはおらず、一なる理性(知性)であるとされる。欲望や感情は、理性がコントロールすべき劣った活動である「非合理的理性」しかない。理性が間違った判断を下す時それは非合理的理性に成り下がっている。ですから、そうした誤りである「欲望や感情から影響を受けない事=アパテイア(apatheia)」が理想とされる。

彼らは理性以外のものを一切認めず、理性にしたがって生きる事が最善であると説いた。そうした理想を実現している人を「賢者(sophos)」と言う。賢者は理性にしたがって生きることによって、自然にしたがって生きる事が出来る。

またストア派と言うと、有名な「自殺」を積極的に肯定したという説を聞いた事がある人もあるかも知れません。しかし自殺が許されるのは、めったに生じない「賢者」だけである。凡人の自殺は認められない。誤解なきように。


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©SAITO Toshiyuki