私のバイク歴  2

卵から孵ったよ


VFR に満足して乗っていた最中、1 台気になるバイクがありました。そうです限定解除に落ちた帰りにふと見たバイク、ハーレー・デイビットソン・スポーツ・スターです。見たのは XLH883 でした。日本車の感覚からすると大排気量なのに、とっても小柄でスリム。ふんぞり返るでもなくうつむく訳でもない、当時よく言われた「普通のバイク」です。人によってはハーレーに対する特別な思い入れがあって、乗り難いんじゃないかとか、壊れ易いんじゃないかとか、勝手に心配しておいて、そんな事がなくて感激しますが、私には変な先入観がありませんでした。

普通のバイクとして気に入って、普通に乗ったのでした。実は購入前にもう1台気になって試乗までしたバイクがありました。BMWR80です。パパサン( XLH883 を日本では、しゃれてそう呼んでいます)と同じ位の排気量。やっぱり普通のバイクです。ハーレーも BMW も他車種を含めていろいろ調べてみました。今現在は少しばかり違うのですが、当時( 10 年程前)の BMW はイマイチ元気がありませんでした。製品の主流は完全に K シリーズに移り、丁度 4 バルブの K100 が発売された頃でした。マフラーが丸い断面になった頃です。以前の K100 は四角だったので見分けられます。水平対向空冷2気筒を積んだRシリーズは完全に開発から取り残され、過去の遺産で食いつないでいる没落貴族といった風でした。

具体的に言うと、少し前の 1000ccエンジンでは 70 馬力あったのに中低速重視の 60 馬力にしてました。乗り易くはなっているんでしょうが、はっきり言って退化です。当時でも BM らしいバイクは水平対向で、しかも(当時の)現行の R80 や R100RS ではなくて、先々代の。R69S を頂点とする一群こそが真の BMW であるといった評さえ見かけられました。

こうした批評の多くは誤っていますが、真実を突いている面もあります。ちょうど、未だにライカのカメラで最高なのは M3 だ、と書いてはばからない記事と一緒です。使い易くはなっているのでしょうが、工業製品としての完成度や加工精度は昔の方が絶対に良いという主張です。だからこそライカは日本製のカメラに圧倒され、BM も同じ道をたどろうとしていたのです。中古で程度の良いのを探せ、なんてまっとうな評論家の言う事ではありませんし、そもそも現行製品の中にマシなものをそろえられない当の企業がだめなのです。当時の BMW はそんな企業だったのです。

さらに重大な欠陥として、オイル消費の多さ(1リットル/1000キロ)、タペット・クリアランスの狂い易さ等も挙げられます。かつてはハーレーと双璧をなした美しい塗装も見る影もありません。対してハーレーは、頑丈なエンジンや車体(何せ至る所鉄製です)、メインテナンス・フリーの油圧タペット、美しい塗装などなど。そのイメージとは裏腹に確実に工業製品として進化し続けているのがハーレーです。

おまけにイメージの明るさもBMWとは対照的です。暗―い北国のバイクと陽気なアメリカン。アップライトな乗車姿勢も素敵です。

とは言うものの、乗ってみました、R80。川口のAMSフジイに行ったら、すぐに 80 を貸してくれて小1時間試乗しました。本当は申し訳ないのでもっと早く返そうと思ったのですが、なにせはじめて行った店なもので道に迷ったのです。なのに藤井社長は、もういいの?なんて良い人でした。もう少しで契約してしまいそうでした。しかし資料だけもらってきて上記のように考えた結果、スポーツスターにしたのです。人によってはハーレーと BM じゃあ、まるで違うだろう、と言うかも知れませんがそんな事はありません。そう言う人こそ、かわいそうに先入観にとらわれているのです。少なくともR80とスポーツスターは同じような普通のバイクです。

そうしてパパサンでもと思っていたのですが、どうせボアアップするならということで1200にしてしまいました。これは大正解でした。後で仲間のパパサンと乗り比べたらその差歴然。チョッと大げさに言うと、400 と 750 位の力の差があるのです。

少しフォローしておきますと、BMW はその後ますます衰退し、R80 のシャーシーに 100 のエンジンを載せて、R100( RS ではないノンカウル版)クラシックというのを出してきました。これがなぜ衰退かと言うと、手持ちのバリエーションの中から人気のある適当なものを選んで組み合わせ、あたかも新商品のように見せかけているからです。しかしクラシックはなかなかの人気で、友人は買い損なって程度の良い中古車をやっと手に入れたほどでした。しかしこのエンジンは R100RS そのものですし、車体はR80そのものでした。車検証には R80 と書いてあったのですから。ただ排気量が本物の 80 よりは当然大きくなってはいましたが。その後も懲りずに GS なんかも再生産していてセコイ商売です。

これがなぜフォローかというと、その後ドイツ人もやっぱり水平対向じゃなきゃ飯が食えん事に気付いて新型の水平対向エンジンを出してきたからです。現行の R シリーズがそれです。過去の遺産で食いつないでいた老婆のごとき旧型とは違い意気込みが各所に現れています。ただノンカウル版の昆虫のようなスタイル、耕運機のようなハンドルには唖然とさせられました。新型にはあまり乗った事がないのでコメントは差し控えますが、旧型から乗り換えた友人の言う通り、重心が高くなったような印象です。じゃあなぜ水平対向にこだわっているのか?Kシリーズの立場はどうなるんだ。この辺が微妙です。

市場での位置付けからして、BMWは消費者が水平対向じゃなきゃ買ってくれないのでしょう。4気筒なら日本製がいっぱいありますから。そうなれば企業ですから作ります。そういう事です。


さて本題のスポーツスターです。作っている国も会社も違うと、同じバイクでもこんなに違うのかとショックを受けました。確かに現代のバイクです。レトロなイメージで売るバイクではありません。しかしどうしても首を傾げたくなるような所が若干あります。クランクの強引な連結は良いでしょう。振動の大きさと引き換えにグリップ感は絶大です。トラクションとも言いますが、パリダカ参戦位からホンダは気付いたようです。等間隔爆発のスムーズなエンジンよりも、ばらついて爆発するエンジンの方が確実に路面を捉えて車体を前に進めます。コーナーでもいきなり滑り出さずに、ゆっくりとじわじわ滑る感覚が得られます。ホンダのV4エンジンでも360度クランクと 180 度クランクでは、180 度の方が等間隔爆発に近く高回転向きなのですがグリップが落ちるようです。

シリンダーの中で爆発が生じピストンを押し下げ、クランクを回して力が伝わる。しかし4ストロークという位ですから、排気時や給気時など爆発していない時の方が長い訳で、その時はクランクの回転する慣性力で力が生まれている訳です。ですからイメージ的にはサーボモーターが回転・停止を急速に繰り返していると考えれば良いでしょう。より電気モーターに近いスムーズな多気筒等間隔爆発エンジンでは、トータルで高トルク・高出力でも1爆発当たりの力は決して大きくはありません。タイヤは強烈に回されますが路面状態の悪い状況では力が伝わり難くなってしまいます。オフロードのタイヤがキャラメル状に凸凹しているのは、その凸凹で路面を強く引っかいて車体を前進させるためです。

不等間隔爆発エンジンではタイヤへの力の掛かり具合が断続的になり、結果的に路面をより確実にとらえられるのです。この事は物理的なだけではなく、ライダーに非常に大きな安心感をも与えます。アメリカのオーバルコースで行われるバイクのダートレースで、かつてヤマハのケニー・ロバーツ(シニア)が 4 気筒の 2 ストロークエンジンで頑張っても勝てなかったのは、このトラクションの違いと言われています。こうしたプロの次元の話をしなくても、安心感は乗って直ぐに分かります。もしかしたら絶対に転倒などしないんじゃないかとさえ思わせる程の安心感があります。最近の WGP でも不等間隔爆発エンジンはビックバン・エンジンという名で用いられているのは、このトラクションと安心感が好まれるからのようです。

やっと手に入れたスポーツスターは赤のツー・トーン・カラーでした。これが実にキレイな塗装で惚れ惚れするような出来栄えです。オプションカタログを参照すると、人手で塗っていると写真がありましたが、日本でやらせたらカスタムショップで、10 万円オーバー・コースでしょう。実際タンクを5割増の純正オプションに替えようと入手したら下地塗装仕上げでしたので、幾つかの塗装屋にフロント・フェンダーを外して見本にして、聞いて回った所、同じ色は出せないと断られました。あるカスタムショップに持ち込んだところ、上記の値段を言われました。タンクだけでその値段?お金の事を言うと、それならどうぞ安い所に行って下さい、うちは納得の行く仕事しかしませんとキッチリ言われました。

まあそれはそうなんでしょうが、本社でも塗装を引き受けてくれるようで、どうやら遥かに日本でやるより安いようです。これから外装部品を購入される予定の方は、絶対に純正カラーで塗装済みをお求め下さい。下地塗り仕上げを入手した私は仕方なく近所の4輪の塗装屋で黒一色に塗ってもらい、コーリンで買ったステッカーを貼ってそれらしく仕上げました。このビックタンクを付けるメリットは、燃料切れの恐怖から逃れるためだけではありません。後述のミクニのキャブにセットされている、まん丸のエアー・クリーナーとの組み合わせで、何とニーグリップが出来るようになるのです。逆に言えば、スモールタンクと純正のオーバル・エアー・クリーナーではニーグリップ出来ないのです。これもハーレーに乗る人にはどうでも良い事なのかも知れませんが、普通のバイクとして乗りこなそうと思っている人にとっては大切なポイントです。

手に入れたのは4段ミッションのチェーンドライブ&プルバックハンドルバー&ワイヤーホイールというモデルでした。今から10年程前はそんな仕様だったのです。最近はスポーツタイプとのんびりタイプに1200も分けられていますね。仕方ないので、普通のハンドル・バーに交換しました。問題はブレーキ・ホースです。一部が金属パイプ製なので強引に曲げてしまう人もあるようですが、気分の良いものではありませんし、車検時にオリジナルに戻す事を考えると新規にもう1本ホースを作ってしまった方が良いでしょう。当時、適当な長さのキットが手に入らなかったので、某有名ハーレーカスタム・ショップで作ってもらいました。BOTT にも常連の誰でも知っている店です。ところがそのホースを組んでみると、液漏れします。ちなみにそれを作ったのは、若い店員さんではなく雑誌にもちょくちょく顔を出すオーナー自身でした。大将と呼ばれているんでしょう、こういう店では。近所の国産車店で面取りをして修正し、どうにか付けました。こんなもんです、雑誌に登場する店が全て一流の技術を持っているとは限りません。要注意。

ところがその国産車店の方も、経験がないせいで Dot 5のブレーキ・オイルならどれでも良いはずと、グリコール系のオイルを入れてしまったのです。ご存知のようにハーレーにはDot 5でも、シリコン系のオイルでないとシール類が侵されてしまうのです。私の金でその店は勉強したようです。もちろんただで修理させましたが。

街を走るハーレーはうるさいので有名ですが、あれはほとんど直管マフラーだからです。元々は厳しい日本の騒音規制に適応させるため、絞りに絞りまくっています。ですからそこいらのアフター・パーツのマフラーを付けているスポーツ車より、純正マフラーは静かです。静か過ぎて改造したくなるのでしょうから、これはこれで問題ではあります。うるさいのは嫌いですが、ちょっとした改良でモアパワーが手に入ると聞かされるとやってみたくなります。警官に注意されない程度の音で、2割増しのトルク(あくまで体感比ですが・・・)が得られるなら、という訳で給排気系を少しいじってみました。排気はスーパートラップ。キャブはオリジナルが負圧式だったのを、強制開閉式に替えてみました。メーカーはミクニでした。今もあるのでしょうが、スポーツスター用にセットアップしたものが売られていて、とりあえずは付けただけでそこそこの効果が得られます。付属しているメインジェットを2度ほど交換・テストして満足の行く結果が得られました。うたい文句通り、体感的には2割増のパワーアップでした。トルクもカタログ値が9キロ台だったので、恐らくは10キロ台に乗っていたのではないかと想像出来ます。

これで遅いはずがありません。直線はもちろんワインディングでもかなり行けます。ターンパイクの登りや伊豆スカイラインでは最高速で不利ですが、芦ノ湖や箱根スカイラインではドカテイ900SSより速いのです。もちろん乗っているライダーの腕にもよるでしょうが、仲間内で互いにその辺は良く分かった上で、そう結論付けました。筑波のBOTT等でドカとハーレーを見比べれば分かります。サーキットで良いタイヤをはいてと、究極を追求するならドカですが、ちょっとしたカスタム程度では、300ccの排気量差で有利になります。こうなると、ステップはもちろんスーパートラップも路面にタッチする事があります。アップタイプがそんな時にはお勧めですが、とりあえずはリアサスのイニシャルを増やしてやってその場しのぎは出来ます。ここまで来ると、サスへの不満がつのります。簡単なのはフロントのスプリング交換で、動きが大分改善されます。プログレッシブというのを組みました。フロントブレーキにも不安が感じられましたのでISRの4ポットに替えました。削り出しの綺麗なキャリパーでローターは本物のフローティングです。「フローティング風」の実はほとんど動かないローターとは違い、本物は静かに走ってみるとシャーと振動音が聞こえる事を実感出来ました。フット・ステップもどうにかしなくてはなりません。オリジナルはリラックスした良い位置なのですが、コーナリングで余りにも早く擦ってしまうので、替えました。削り出しのものが一桁で手に入ります。しかし今度はハンドルとのバランスがしっくり来ません。こうなるとイタチゴッコです。こうして果てしないカスタムへみんなはまって行くのでしょう。

こうしたカスタムとは別に、基本的な改善個所というのもあります。まず驚くべき品質のハイテンションコード。走行中に触れるとビリビリ来るほどリークしてます。直ぐにイエローの社外品と変えました。また、書類や工具入れのスペースがありません。直立しているナンバープレートの裏に、ウエストバックの本体だけを切り取ってタイベルトで留めました。

バックミラーは飛ばす(回転を 5000 以上に上げる)と、振動で緩んできておじぎ状態になってしまいます。ウインカーも振動で接触不良になる事があります。繊細な人はここまで回さないのでしょうが、こんなもんだと思ってしまうと、前が空いている限りフルスロットルです。それが正しい乗り方でしょう。

最高速はメーター読みで 200 にもう少しで届く位です。ただ最高速に近づくにつれて、フロント周りの剛性不足が露呈し非常に不安定になります。当たり前か。この最高速は60馬力のR100系より確実に速い値です。旧型の2本サス付きモデル( 70 馬力)と、どっこいのようです。ただ向こうがフルカウルの場合、前がずーと空いているとこっちが風で苦しくなります。上述の 900SS はさすがに上まで伸び、高速で気合の入ったライダーが飛ばすと着いてゆけません。従って国産のリミッタ―未解除車なら、高速でも先行可能です。

しかし以上の実現には法的規制の他に、乗り手の精神を鍛え直さねばなりません。4000rpm とか 5000rpm 位で振動に驚いているようでは、まだまだです。ネジの 1本や 2本落ちたって走れば良いじゃん、位の堂々たる胆の持ち主でないとダメです。繊細な私などは、ウインカーが振動で点かなくなっただけで意気消沈して、山の麓で引き返した事がありました。こんな時は手信号でもすりゃあ良いんだよ、とは岡目八目。もしかしたら車体全体がバラバラになるんじゃないか、という恐怖に打ち勝ってこそ、BMやドカとそこそこ競い合えるのです。

この振動で精神が鍛えられると、SR なんてかわいく思えますし、ドカの空冷はパンチに欠けるようにさえ感じられ、BMWはスムーズ過ぎてつまらなく思えてきます。唯一匹敵し得るのは Moto Guzzi でしょうか。ただしあのエンジンの非本来的金属ノイズだけは許せません。グッチのカチャ・カチャ音、タペットクリアランスも狂いやすいようだし品に欠けます。カワサキ忍者(もちろん GPZ900R )のヒューン・ヒューンという無意味なノイズと同様、知性と技術力の欠如が、どうしても垣間見えて来るように感じるのはなぜでしょう。


タイヤについても少し触れておきます。純正のタイヤは最近の年式モデルでは、随分と改善されたようです。私の所有していた4速チェーン・モデルの時代は、パパサン程ではないものの真っ直ぐ走るのがせいぜいの代物でした。何せ当時のパパサンのリアには、実用車のものかとさえ思えるようなブロックパターンのタイヤが付いていたのです。1200はややマシでしたが、スポーツ・スターの名前にふさわしい走りをしてやるには役不足です。Avonを当時の雑誌は薦めていましたが、またしてもへそ曲がりの私はメッツラー ME33/99、コンチネンタル TKV11/12、ピレリー・ファントムを試してみました。ME33/99 のコンビは素直で好印象でした。TKV もグリップ力に引かれて入れてみましたが、ライフの短さにはあきれるほどでした。見る見る減ってゆくのです。ピレリはタイヤの断面形状がもっと小さなバイク向きなのか、フラフラした印象がぬぐえぬまま使い切りました。サイズのみではなく車輌重量とトルクが設計時の想定と大きくかけ離れているのでは?という印象です。

言い忘れましたが、当時の(今は?)スポーツスターには、リアホイールにダンパーが入っていません。高トルクに強いエンブレ、ダンパー無しですからコーナー進入時のシフトダウンは慎重にやらないと、キュっとタイヤを鳴らしてしまいます。これも度重なるとタイヤの寿命に関わってくるのでは?と思える程です。

タイヤの次は足回りです。前に述べたようにフロントサスの動きが鈍いので、プログレッシブ・スプリングに変えた他は、フォークの剛性強化のためにフェンダーのすぐ上に、左右のフォークを連結するブレスを入れました。純正オプションで出ています。これは綺麗な部品で、他の「スクリーミング・イーグル」という名前が付いたハーレー 純正の交換用部品より遥かにマシな出来をしています。純正オプションではない社外品の多くは、コスト面から品質が悪く、大体が替えた部品からサビが出てきます。ミクニ製のキャブに付属しているエアクリーナーカバーでさえ、元々のメッキに比べれば残念ながら及びません。聞く所によると、もうコストの安い東南アジアは言うに及ばず、日本でも高品質のクロームメッキは出来ないか、出来たとしても非常に高価になっているようです。そのために、替えた部品から錆びてくるという皮肉な現象が生じてしまうのです。

リアサスはバンク角確保の点からは長いに越した事はありません。カッコの点ではローダウンということで、短いサスにしたいところですが、2人乗りするとタイヤとフェンダーが接触する恐れすらありますので、お気を付けください。とりあえずは、飛ばす人はイニシャルを1、2段階上げておいた方がいいでしょう。本格的にはサスの入れ替えですが、ダンピング調整の付いた同じ車重クラスということで、ゼファー750のものを付けたら妙にフィットしていました。

こうして可愛がっていたスポーツスターですが、1回目の車検を迎えることなくこの世を去ったしまいました。栃木県の足尾町で事故にあって逝ってしまったのです。ライダーの方は入院1ヶ月で済みました。自爆でさいわい誰も他人を巻き込まなかったのですが、アスファルトの上をクルクル回転しながら「シュワンツみたい」と自己分析しつつ「あー、あー、高かったのになー」と見送ってやりました。

その時は皮のレーシングスーツ、フルフェイス、ブーツ、脊椎パットという完全防備だったので、背中を下に亀のように回っても命に別状はなかったのです。もちろん世の「良識派」は、色々言うでしょうが、事故は全てケース・バイ・ケース。詳しく状況を説明した所で、参考にならないと思います。と言いつつちょっとだけ話します。

なにせ遅い車を上り坂でパワーに任せて追い越したのです。対向車が丘の向こうから現れたので、更に加速して遅い車の前のスペースに滑り込み左車線に戻リました。正面衝突は免れたものの、丘の向こうは右カーブ。今度は右に曲らねばなりません。この辺で帳尻が合わなくなってしまいました。しかも路肩にはダンプの落としていった砂が撒かれていて、ブレーキもままなりません。どうにか左傾きから中立ほどに戻した所で、左側の岩の壁にタッチ。しばらく持ちこたえたものの、ついに転倒、、、といった顛末でした。

そのため、左手の甲、右の手首、右の親指付け根、左ひざ、左脛などに多数骨折、となったわけです。レーシングスーツのヒジ近辺には皮が重ねてあったほか、プラスティックのパットも入っていたのですが、それと皮膚とが擦れてひどい擦過傷になりました。また左ひざにもプラパットのお陰で、肉がえぐれた個所がありました。まあ、そのお陰でお皿が割れなかったのかもしれませんが。岩の壁との接触時に持ちこたえたのは、ヒジとヒザで支えたからのようです。最後にハンドルバーが接触して転倒に至ったようです。

実はその1週間前にも1度転倒していて、バックステップを直したばかりだったのです。その時は道のど真ん中に砂が大量に撒かれていて、ブレ―キングする逃げ場を失って転倒したのです。その時は怪我もなかったのですが、砂>ブレ―キング出来ない>スリップ>転倒という図式が体験上刷り込まれたばかりだったのです。そのため固まってしまったという、今にすると情けない事故でした。

幸い直前に買ってあった ZOOK というスクーターがあったので、退院後はZOOKでリハビリに通いました。またその当時、週に1回大学に教えに行っていたので休講にしてはまずいかなと思い、入院中も車椅子で大学に行ってきました。イギリス人の宇宙物理学者ホーキング博士を気取ったつもりだったのですが、、、古い大学というものは、床が木で、おまけに油が引いてあるんですよね。そこを車椅子で通ると、車輪にその油が着いて手首からヒジまで真っ黒。包帯が巻いてあったのですが、看護婦さん汚しちゃってゴメンナサイ。病院に帰ってきてからも、車輪の跡が廊下にくっきり。そんな苦労も今は昔、まだまだ走ります。


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©SAITO Toshiyuki